大学を卒業後、部品メーカーに入社
海外勤務を経て本社管理業務に従事
念願のマイホームを購入
子供にも恵まれ、家族4人で暮らしている

大まかな私の人生
文字に起こすとなかなか真っ当な人生を歩んできたと思えてしまう

しかし、ここには重大な情報が抜け落ちている

そう 私は筋ジストロフィー患者

この情報と私の心境を追加すると

大学を卒業後、部品メーカーに入社
海外勤務を経て本社管理業務に従事
念願のマイホームを購入
子供にも恵まれ、家族4人で暮らしている
あるとき、筋ジストロフィーを発症
健常者から障がい者にジワジワと変わりゆく自分
周りの視線から逃れるように健常者のフリをする
何度も転び、ケガをして
次第に介助なしに椅子から立ち上がれなくなる
いつまで働けるのだろうか
将来に不安を抱えながら今日もまた会社へ向かう

・・・上昇基調の株価が大暴落、場合によっては上場廃止の危機・・・
そんな印象に変わってしまうのは私だけなのか・・

考えれば考えるほど、不安に苛まれる
答えなど見つからない、出口すらない・・・まるで覚めない悪夢でも見ているかのような日常

そんなとき、私の前に車椅子の若いイケメンが現れた

障害を負っていてもひた向きな彼の放つ眩い光は、私の価値観を大きく変えた

いつしか、私の心の中に、彼を模したもう一人の私が棲みついた

最初は小さかったが、時とともに私の人格にも影響を及ぼすほど、彼は大きな存在に成長した

筋ジスのこと
将来の不安なこと
なるべく考えないように、一方でより深く考えるように
そして、前向きに、明るく考えようとする私

いくら気を強く保っていても、時には不安の波に押しつぶされそうになる

そんなとき、彼は手を差し伸べ、笑顔でこう言う

「考えることは良いことだ 考えすぎることだって」
「不安になることだってしょうがないよ 人間なんだから」

「でもね」

「なるようにしかならないんだよ」

「ここであきらめて立ち止まるか 前に進むか」

「キミ次第でいくらでも変えられる」

「さあ この手を取って 前に進もうよ」

・・・・

目が覚めると全身冷や汗をかいていた。
正直な気持ち、いい寝覚めとはとても言えない。

でも、自分の歴史の最後には付け加えたい言葉がある。

「定年退職後、子供家族の頻繁な訪問に嫌気をさしつつも妻と幸せに暮らし、天寿を全うした」 

どうすればこの人生にたどり着けるのだろうか。

努力だけではどうにもならないことくらいわかっている。

でも、不思議なことに焦る感覚はない。

あきらめているのか?

違う。

まだ道半ばだから、わからないだけなんだ。


だって、なるようにしかならないんだから

そこから先はどこに向かうんだろう

気になるから一歩前に

そういえば、これの繰り返しなんだな私の人生