朝起きても夢をはっきりと覚えていることはあまりない。
印象に残る夢以外は。
子供のころ、夢の中で朝、目を覚ましてカーテンを開けた途端、窓から髪の長い女性のオバケが出てきた、などインパクトのある夢は今でもはっきり覚えている。

同じように、はっきり鮮明に内容を覚えている夢を最近見ることができた。

怖い思いをしたとか、痛い思いをした、などという内容ではない。

日常の、ごく普通の、家族と触れ合っている内容だ。

ただ、やっぱり私は筋ジスだった。

夢の中なのに椅子から立ち上がることに苦労する。
夢の中なのに走ることができない。
夢の中なのに子供たちを抱っこしてあげられない。

いつもとは違う見慣れない公園の広場で、走り回っている下の子にぶつかって派手に転倒。

やっぱり一人では起き上がれない。

妻や他の家族連れの男性に手伝ってもらい、やっとのことで立ち上がる。

地面の土の匂い、
自分の体の重さ、
周囲のまなざし、

そして、幼い我が子たちの不安そうな表情・・・

すべて鮮明に覚えている。

筋ジスが発症してからかなりの時を経ているが、夢に筋ジスを意識したことは初めてだ。


モーニングコーヒーをぼーっと見つめながら、悪い意味で夢の余韻にひたる。

妻「悪い夢でも見たの?寝言言ってたよ、大丈夫?」
私「え?そ、そうなの?なんて言ってた?」
妻「何言ってるのかよくわからないけど、何か言ってた」
私「・・・」
妻「大丈夫?もうすぐ時間だよ?会社行ける?」
私「大丈夫だよ。ちょっと疲れてるのかな。行ってきます!」


夢の中でも筋ジストロフィーを意識している。

力自慢でカールルイスより速く走れて空も飛べる、俺って無敵のヒーロー!

子供のころ見たこんな夢を、もう一度見てみたい。